2.ゲームのルール

「早速勝負を始めさせてもらうが、お互い時間が無い。簡単なゲームで決着をつけよう」
 バンは空いている椅子に座りながらそう言った。ここで勝負をすることはお互い知ってのことらしく、ヴァンはそのことに関しては何の異論も無いようだった。
 バンは懐から何かを取り出してテーブルの上に置いた。それは5枚1組、10枚のカードだった。
「ゲームに使うのはこのカードだ。5枚で1組、表には1から5までの数字が書かれている。裏には何も書かれていない、確かめてくれ」
 ヴァンは10枚のカードを手に取り、裏表、すばやく、しかし正確に観察した。バンの言うとおり、表の数字以外、カードを区別するような印は書かれていない。
「確認したら、そのうち5枚、1から5までの数字のカードを持っていてくれ。それがアンタのカードだ。残る5枚、やはり1から5までをオレ様に返してくれ」
 ヴァンは言われた通り、10枚2組のうちの1組、5枚を手に取り、残る5枚をテーブルの中央に返した。
「さて、それぞれが5枚づつもち、まず2人のうちのどちらかが解答者に、どちらかが出題者になってゲームは始まる」バンは5枚のカードを手に持ち、簡単にシャッフルして、そのうちの一枚を選んで裏向きでテーブルの中央に置いた。「出題者はまず、このように好きな数字のカードを一枚選んで、解答者にはその数字が見えないようにカードを裏向きにしてテーブルに置く。解答者はこのカードに書かれた数字が何かを当てる。さぁ、何だと思う?」
 口元に笑みを浮かべながらバンが言う。ヴァンは表情を変えずに答えた。
「もう”ゲーム”は始まっているのか?」
「いや」あまりの反応の無さにバンは少々手応えのなさを感じながら説明を続ける。「まだ説明だ。当然このままでは解答者は数字を当てられないから、解答者は3回まで出題者に質問をすることができる。ただしその質問は出題者が「はい」「いいえ」で答えられるものに限られる」
 バンはどうぞ、というジェスチャーで相手を促す。ヴァンはそれに促され質問をする。
「そのカードの数字は…奇数か?」
「そうそんな感じ、ちなみに答えは「いいえ」だ。質問は3回までできるが解答できるのは1回だけ。3回の質問のうち、わかった段階で答えてくれればいい。もし1回の質問だけでカードの数字が当てられたら解答者には3ポイントが与えられる。2回目なら2ポイント、3回まで質問した場合は1ポイントだ。もし何かのアクシデントで4回以上質問をしてしまった場合、ポイントは与えられない。2回目の質問はどうだ?」
「その数字は「2」か?」
「それは質問?それとも解答?」
「質問だ」
「オーケイ、答えは「いいえ」だ。今のようにそれが質問であるか解答であるかはわかりにくい場合があるので解答者は解答する場合は必ず「今から解答を行う」と宣言すること。しない場合は質問とみなす。さて、数字が何かわかったかな?」
「「今から解答を行う」。その数字は4だ」
「オーケイ。奇数でもなく、2でもない数字、それは当然4だ。じゃぁ、カードを表向きにするぜ」
 バンはテーブルの中央で裏向きでおかれていたカードを表向きにした。その数字は5だった。バンは口元に笑みを浮かべながら、説明を続ける。
「残念、アンタは不正解だから0ポイントだ。このように出題者は解答者の質問に嘘で答えることもできる。ただし1回の嘘につき出題者にはマイナス1ポイントが与えられる。オレ様はアンタの質問のうち、「その数字は奇数か」と言う質問に「いいえ」と嘘をついた。だからマイナス1ポイントだ。これでとりあえずは終了、今度は出題者と解答者を入れ替えて同じことを行う。それで1回戦が終了。これを3回戦まで行い、トータルのポイントが多いほうが勝者だ。ただ3回戦中、1回使ったカードは脇において以後使えないようにする。したがって2回戦は4枚、3回戦は3枚のカードでゲームを行うことになる。以上がゲームのルールだが、何か質問は?」
「特に無い」
「さぁ、この勝負うけるか?」
「あぁ、さっさと始めようか」
 ヴァンの答えに満足しながら、バンは一枚の紙を取り出した。
「今言ったルールがここに書かれている。確認してくれ。こういうのはちゃんと紙に書いておかないと後でトラブルの元になるからな」
「同感だな」ヴァンはその紙を手にとってすばやく確認した。「あぁ、大丈夫だ」
「よし、じゃぁ、いってみようか!」

1 対戦は2人で行う。それぞれが1から5までの数字の書かれたカードを使用する。
2 2人はまず、出題者と解答者に分かれ、以後順に交代していく。
3 出題者は自分の好きなカードを5枚の中から選び、そのカードを裏向きでテーブルの上に置く。解答者はその裏向きのカードの数字が何であるかを当てる。
4 解答者は3回まで出題者に対し質問を行うことができる。ただしその質問は「はい」「いいえ」で答えられるものでなければならない。
5 解答者は1回だけ解答を行う。その際必ず「今から解答を行う」と宣言すること。宣言を行わなかった場合、それは質問とみなす。
6 1回の質問で解答者が正解をした場合、解答者には3ポイントが与えられる。以後、2回の質問で正解した場合は2ポイント、3回の場合は1ポイントとなる。4回以上質問した場合、正解してもポイントは与えられない。
7 出題者は、解答者の質問に嘘をつくことができる。その場合、1回の嘘ごとに出題者にはマイナス1ポイントが与えられる。
8 お互いが解答者となり、解答をした時点で、1回戦を終了し、これを3回戦までおこない、合計のポイント数が多いほうが勝者となる。ただし1回戦終了ごとに使用したカードはゲームから取り除き、以後使用することはできない。



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